乳母車 ★★★

乳母車 [DVD]
乳母車
1956 スタンダードサイズ 110分
DVD
原作■石坂洋次郎 脚本■沢村勉
撮影■伊佐山三郎 美術■木村威夫
照明■高橋勇 音楽■斉藤一
監督■田坂具隆

田坂具隆の文藝映画ということでなんとなく真面目一辺倒な感じがして敬遠していたのだが、なんのなんの、実はけっこう変な映画ですよ。父親が妾を囲って子供まで設けていることを知った娘の視点からおとなのそれぞれの事情と思いを描いてゆき、最後は関係者が一堂に会してディスカッションドラマになる。そこで結局、女性の自立というテーマが浮かび上がってくることになる。
戦後民主主義下での女性の地位向上というテーマが浮かび上がってくるのが遅すぎる気がするが、その後はさらに奇妙で、妾の子を連れて赤ちゃんコンテストに紛れ込んで、立派な乳母車をせしめてくるというコミカルな場面で、妾の子という出生の不幸を乗り越えて力強く人生を生きていることを祈りながら映画は終わる。宇野重吉と山根寿子のシリアスな演技から打って変わって、芦川いづみのコスプレコメディで終わるとはいったいどんな趣向なのか。いや、可愛いからおかしいんだけどね。
■どんな境遇に生まれたとしても子供の未来が明るく輝けるように、それを最優先で様々な問題を解決しようとする若者たちの姿が清々しいのは確かだし、戦後民主主義に対する素朴な信頼感が眩しいよね。でも、田坂具隆の腹の底はそんな生易しいものじゃないと思うけどね。そうしたドロドロとした真情は東映に招かれてから爆発することになるんだね。