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最終夜『満願』(撮影・小林拓、脚本&演出・熊切和嘉)だけは演出の熊切和嘉がじぶんで脚本を書いている。実質の主演は市川実日子で、彼女がなぜ金貸しを殺害したかがミステリーの核心。高良くんは狂言回しだけど、二人にとってのそれぞれの満願成就とはなんだったのかが徐々に明らかになる。
しかし、熊切監督独特の作風故に、ちょっととっつきにくい。松本清張ばりの昭和テイストの台詞回しが平成の世に浮世離れして見えるし、貧乏な畳屋にしては、家構えが立派過ぎるよね。平成の世における生活感のリアリティがまず不安定。なので、お話の目指すところがなかなか諒解しにくい。いつの時代のどこの話なのか、というリアリティが曖昧としている。敢えてそうした演出なのだろうが、掴みにくい…
お話のミステリーとしての解決についても、ちゃんと原作通りに謎を布石しているし、心理的な動機についてもちゃんと描かれている(当たり前だけどね)んだけど、原作を読んでいないと細部が十分に理解できないかもしれない。だるま市の場面が非常に重要なのだが、場面も短く、ロケ撮影も印象が薄いのはバランスが悪いだろう。
下宿のおばさん役の市川実日子は悪くないけど、高良くんとのエロティックな関係性がいまいち結像しない。配役にはもうひと工夫必要な気がするし、逆にもっと市川実日子のエロスを引き出す演出が必要な気がする。寺島進の使い方は抜群だったのになあ。
というわけで、どうも第二夜のハマり方に比べてモヤモヤが残る最終夜でありました。原作読んだ方がすっきり堪能できそうだなあ。