神様のパズル ★★★

神様のパズル
2008 ヴィスタサイズ 134分
MOVIX京都(SC2)
原作■機本伸司 脚本■NAKA雅MURA
撮影■柳島克己 照明■渡部篤
美術■内田哲也 音楽■鳥山雄司
CGIプロデューサー■坂美佐子 CGIディレクター■太田垣香織
監督■三池崇史

■人工授精で生まれた謎の天才女子大生(谷村美月)と同じゼミになったヤンキー大学生(市川隼人)は、もののはずみでゼミのテーマを”宇宙を創る”と言ってしまうが、彼女の理論にもとづいて設計された巨大加速装置”むげん”を使えば、それも夢物語ではなかった・・・

■原作は小松左京賞を受賞した純粋SF小説らしい(これから読むよ)が、脚本はNAKA雅MURAが大幅にアレンジしたようだ。しかし、かつての筆の冴えは感じられず、インドロケは生きていないし、クライマックスのスペクタクルも中途半端で、ロックと寿司屋というネタも腑に落ちない。ハードSFはどうも苦手だったらしく、市川隼人を思いっきりヤンキーに設定してしまったあたりは、苦笑を誘う。確かに、東映配給でVシネの帝王三池だから、むべなるかなだが、いかにもオタク的なキャラクターの谷村美月とのコントラストが少々わざとらしく感じる。

三池崇史の演出は、職人監督としては頑張っており、キレは悪くないが、どうしても脚本の弱さから抜け出しておらず、なぜ?の嵐のままラストはグズグズに崩れてしまう。

■しかし、しかし。決して退屈な映画ではなく、特に谷村美月の硬質で繊細な演技力がヴィヴィッドに引き出されていることには正直に感謝したい。寄せて上げて創り上げた苦心の胸の谷間なんて、大人の私にとっては実はどうでもよく、彼女の思いつめたような表情と強い意志の宿った目元を見つめるだけで、スクリーンに引き込まれて胸元がざわつくのだ。これは・・・これは恋ですか?

■冗談はさておき。この映画のもう一方の主役はメビウスの輪の形状の巨大な加速器”むげん”である。冒頭から登場するこの異様な構築物については、一瞬何時の間にこんな凄いものが日本に完成していたのかと思ってしまったが、よく考えると映画的フィクションであるはずと気づいた。つまり、これはすべて3DCGなのだ!遂に日本映画のCG表現がILMのレベルに達した瞬間だ。空撮の下絵に見事にマッチムーブされた”むげん”の威容を見るだけでもこの映画は値打ちがある。その質感のリアリティと巨大感の表現には全く感嘆した。あるいはミニチュアを合成したのではと疑ったのだが、これはOLMデジタルのCGワークであるらしい。これは凄いよ。ラストのスペクタクルで、その姿がもっと生かされれば盛り上がったのに。実に勿体無い。

■技術スタッフもハリウッド映画をよく勉強して頑張っているので、カット毎の密度は高いのだが、ゼミの教授役の石田ゆり子のバストショットなどで、顎のラインが首の白さに溶け込んでしまって、顔と首が一体化して、まるでろくろ首状態に見えるカットがあり、ポスプロでの現像やカラーコレクションの影響もあるのだろうが、もう少し撮影部と照明部が気を使わないとダメだよ。「アフタースクール」なんて、もっと淡彩な色彩設計ということもあり、そんな気色の悪い現象は起こっていなかったよ。

■製作は角川春樹事務所他、制作プロダクションはタイムズイン。

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