西遊記 はじまりのはじまり ★★★★

西遊 降魔篇
2013 スコープサイズ 110分
APV

玄奘孫悟空らの仲間を得て、天竺を目指すまでの前日譚がチャウ・シンチー独特の数々のギャグを満載して描かれるが、根本的には悲恋を描いた恋愛映画。玄奘(ウェン・ジャン)と段(スー・チー)の出会いから別れまでがドラマの主眼で、孫悟空沙悟浄猪八戒もそのドラマの引き立て役として登場する。

■CGを多用したアクロバティックなアクションはもはや驚きもないのだが、チャウ・シンチー独特のギャグ場面は趣向が盛りだくさんで、中盤の戦車登場の場面や花火山の孫悟空の場面などは、これでもかとギャグを詰め込んで、大いに笑わせる。チャウ・シンチー節を堪能できるし、シチュエーション・コメディとして秀逸。しかし、本筋はあくまでも玄奘と段のロマンスにある。スー・チーもここまで魅力的に演出してもらえれば、女優冥利に尽きるだろう。男勝りの妖怪ハンターで、ガサツな女が一目で玄奘に惚れ、まるでストーカーのように付きまとうその心根の可愛さには誰しも惚れてしまうだろう。孫悟空の情け容赦ない極悪非道ぶりも鮮烈。

■なので、Gメン’75のテーマ曲に乗ってラストに4人組が旅立つ場面はかなり唐突で、本来なら孫悟空たち三人と三蔵法師のやり取りが相当描かれないとおかしいのだが、あくまで前日譚で、番外編という意図で、あっさりと省略される。その唐突さを糊塗するための飛び道具としてGメン’75が抜擢されたわけだろう。しかし、ギャグとして秀逸すぎるので、そんな不満もあっさりと吹き飛んでしまう。傑作ですよ、文句なしにケッサク。チャウ・シンチー、やっぱり凄い人だ。

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