太平洋の嵐 ★★★☆

※この画像はamazon様からお借りしました。

太平洋の嵐
1960 スコープサイズ 118分
レンタルDVD
脚本■橋本忍国弘威雄
撮影■山田一夫 照明■小島正七
美術■北猛夫、清水喜代志 音楽■團伊玖磨
特技監督円谷英二
監督■松林宗恵


 本当に橋本忍が書いたのかという疑問がぬぐえない本作だが、松林監督のコメンタリーによると、クライマックスの夏木陽介の「これが戦争だ!」の台詞前後をかなりマイルドに変更したらしい。橋本忍の脚本に対して、田中友幸及び松林監督側の要望を入れて、橋本忍の弟子であった国弘威雄が改訂を行ったようだ。オリジナルでは、沈没する空母飛龍から逃げ出して救助艇に群がる兵を軍刀でなぎ払う場面が用意されていたらしい。のちに橋本忍の書いた「第三次世界大戦・東京最後の日」は橋本忍の持ち味が出すぎて完全に没になってしまったが、ここではまだ東宝のコントロールが効いていたようだ。

 東宝初のカラーワイドによる戦記映画なので、これまでのモノクロ戦記映画からの特撮シーンの流用ができず、円谷英二はハワイ作戦とミッドウェイ海戦をすべてカラーで描きなおしているのだが、どうも場面設定が大味すぎて、緻密さに欠ける印象だ。特にミッドウェイ島空爆シーンなど、地上からの対空砲火のアニメ合成が未熟で、せっかくの大プールならではの拡がりのあるカットが台無しだ。おまけに、ミッドウェイ島は空撮カットばかりなので、ミニチュアの精度も甘く、かなりキツイ。

 それでもこの映画が傑出しているのは、三船敏郎の静かににじみ出る男の貫禄を空母艦橋の司令室で、これでもかと描き出した松林監督と山田一夫キャメラマンの見事な映像作りの素晴らしさによる。三船の斜め後ろ姿にこだわった演出と、余裕でそれに応えた絶頂期の三船敏郎の演技を超えた演技はこの映画の最大の見物である。三船は後に山本五十六も演じて見せるが、本作の山口多聞が軍人演技ではベストではないか。 

© 1998-2024 まり☆こうじ