侍 ★★★

侍 [DVD]


1965 スコープサイズ 122分
BS2録画
原作■郡司次郎正 脚本■橋本忍
撮影■村井博 照明■西川鶴三
美術■阿久根厳 音楽■佐藤勝
監督■岡本喜八

 井伊大老暗殺を目論む水戸浪士のなかで、2人の同士が井伊との内通者として査察を受ける。鶴千代(三船敏郎)と栗原栄之助(小林桂樹)の二人だ。やがて内通者を栗原と断定した首領星野監物(伊藤雄之助)は、その暗殺を鶴千代に命ずる。だが、その後内通者は幹部の増位(平田昭彦)と判明する・・・

 氏素性も明らかでなく、侍としての誇りも持てぬ浪人生活に飽き飽きした三船敏郎が、井伊大老暗殺の実行を手土産に仕官を狙うが、その井伊大老こそ彼の実の父親だったという皮肉で残酷な運命をエネルギッシュに描き出した岡本喜八の代表作。だが、それほどいい出来ではない。

 いちばん違和感があるのは、三船敏郎という存在に対する”父親”という設定が素直に飲み込めないところだ。「用心棒」や「椿三十郎」で演じた素浪人の孤高のイメージが強すぎて、武家社会のなかで、家族を持って生長してきた一個の人間というイメージが成立しないのだ。既に三船は人間を超えたヒーローに成長してしまっていたからだ。本来は、もっと若い役者が演じないと成立しない企画ではないか。

 もちろん、以上の感想はたぶんに個人的な印象に基づくものだが、映画としての、岡本喜八独自のリズムが希薄であり、その一方で喜八節のせいで運命劇の正統的なサスペンスが不足している。こうした脚本なら、それこそ小林正樹で撮ったほうが相応しい気がするし、当時の東映大映の中堅監督が撮れば傑作になったかもしれない。ラストの大チャンバラにしても、当時の池広一夫であれば、もっと斬新な殺陣を見せてくれただろう。

 と、つらつらと文句を並べたものの、特に浪士隊の首魁を演じる伊藤雄之助は絶品で、怪物的な奇怪な人物を演じ切っている。これは凄い怪演だ。

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