トラック野郎 度胸一番星
1977 スコープタサイズ 100分
BS11
脚本■野上龍雄、澤井信一郎
撮影■飯村雅彦 照明■山口利雄
美術■桑名忠之 音楽■木下忠司
監督■鈴木則文
■トラック野郎シリーズ第5弾。野上龍雄が脚本を書いているだけに、さすがに一筋縄ではいかないテーマ性を孕んでいる。テーマは”故郷”で、千葉真一のエピソードと片平なぎさの佐渡のエピソードが絡み合って、人にとって故郷とは何かという明確なテーマが打ち出される。ベタベタに下品なコメディに非常に大層なテーマ性を無理やり構築してしまうあたりが東映作劇の真骨頂といえる。
■村が原発になって故郷を喪った千葉真一が同郷の女である夏樹陽子(マヤ)との腐れ縁に「あいつの故郷はマヤだったんだ」と呟く菅原文太の洞察力は最高だし、「おめえは故郷が欲しいんだよ。欲しけりゃ勝手にどこでも作ればいいんだよ。石ころだって故郷になるんだ。」は名台詞。
■一方で捨て子で両親も故郷も知らない片平なぎさが幻影となって菅原文太を佐渡へ招き、山津波に呑みこまれて死ぬという意表をつく展開に、宮口精二が「土の中から生まれたあの子は土の中に戻っただけだ」と追い撃ちをかける儚い存在を対置する。この水名子というキャラクターの造形はとことん幻想的で、実在したのかどうかも曖昧な印象を残す。ただ、なにしろ東映でコメディで鈴木則文なので、高尚な映像表現にはなりませんからあしからず。でも、片平なぎさが、今みるととても可愛いんだなあ。