痞子英雄 首部曲 全面開戦
2012 スコープサイズ 128分
DVD
■台湾の人気ドラマ『Black & White』の前日譚を描く劇場版で、しかもエピソード1というなんとも日本人にとってはだからどうした?という謎の台湾製アクション映画。反物質爆弾(!)が持ち込まれ壊滅の危機に瀕した台湾を救うのは、暴走刑事と腰抜けヤクザの凸凹コンビだった...
■正直なところ中盤のCGによるヘリを絡めた湾岸でのカーアクションが傑出していて、終盤のクライマックスのジャンボヘリ不時着のサスペンスは全く冴えない。ジャンボヘリの強行着陸といったところで、CGなのだから何とでもできるわけだから、ハラハラのしようもない。
■一方、夜の埠頭を駆使してのカーアクションは、ヘリのCGアクションが相当非現実的で、しかしそのことが何やらヘリの怪物的な正確付けに寄与しており、非常に見ごたえのある名シーンになっている。多分、台湾の車メーカー、ラクスジェンのSUVだと思うのだが、このシーンは完全に台湾車のプロモーションフィルムになっており、車メーカーも出資していたに違いない。しかも撮影は日本でも活躍する巨匠リー・ピンビンだ。ここではホウ・シャオシェンの名作の繊細なキャメラマンとは思えないようなアグレッシブなキャメラワークでアクション映画を盛りたてる。特にこの埠頭のアクションシーンのキャメラの「運動」は単純に凄い。実に守備範囲の広いキャメラマンだ。
■しかし、反物質爆弾を使って何がやりたかったのか、単に戦争を起こして軍事産業で儲けようというだけでは工夫が足りないし、ドラマの核がよくわからない。MITの無駄に美人な大学院生なども中途半端に使い捨てだし、納得できない部分も多い。特に後半に向けてアクションのスケールも見せ方も萎んでしまうのが勿体無い。主人公の刑事とコンビになってしまうチンピラヤクザにも感情移入するだけの仕掛けが用意されておらず、ドラマとして成り立っていないと感じる。