■原作・奥田英朗、脚本・東本陽七&藤田淳志、撮影・川田正幸、照明・藤川達也、音楽・沢田完、監督・藤田明二
■東京オリンピックの突貫工事に出稼ぎ人足として関わり過労で死んだ男の弟が東京オリンピック粉砕を訴えてたった一人で爆弾闘争を始めるというなかなか面白そうな原作のおいしいところをザクザクと刈り落として粗筋だけにして、正味3時間くらいのドラマに仕立てたテレビ朝日55周年記念ドラマ。こうした素材をうまいタイミングで出してくるところはさすがにテレビ朝日だが、作りが雑すぎる。
■制作は角川映画だが、聞いたことのない脚本家がクレジットされているのをみても、脚本開発段階でいろいろと揉めたことは明白。市川崑の『東京オリンピック』のフィルムを大量に使いながらVFXも駆使した超大作であることは確かなのだが、東京一極の繁栄VS地方の貧困という今日にも通じるテーマを設定しながら、その描写に説得力がないのでドラマが冴えないこと夥しい。単純に言えば、「貧困」が描けていないということに尽きる。大体出稼ぎ労働者の田舎の母親が戸田恵子という配役は理解に苦しむ。
■犯人役の松山ケンイチは悪くないが、これに絡む刑事の妹役の黒木メイサなんて気の毒なほど雑な脚色のおかげで全く生かされていないし、速水もこみちも同様。学生運動の活動家諸氏も外見だけそれらしいが、台詞に全くリアリティが無い。せっかく盛り上がりそうなネタなのに、酷いもんです。