孫文の義士団 ★★★☆

BODYGUARDS AND ASSASSINS
2009 スコープサイズ 138分
DVD

辛亥革命前夜、革命の密議をするために香港に孫文がやって来る。清朝の暗殺団からその身の安全を1時間守るために、名も無き若者たちが命を散らしていく・・・

■という、東映名物集団抗争時代劇を翻案したようにも見える歴史活劇。何しろ、本格的なアクションは終盤にしか登場しないという、アクション映画というよりも、歴史映画に近い構成になっている。クライマックスもアクションのためのアクションという演出ではなく、あくまで中国に民主主義を打ち立てるための犠牲として死んでいく若者たちのドラマを見せることを優先している。

■そして、彼らのドラマがしっかりと描かれているので、泣かせに泣かせる映画になっている。特に、ドニー・イェンが今は富豪の後妻に納まっている元妻に今の旦那の護衛を懇願される場面など、いかにもベタベタしたお涙頂戴場面なのだが、その綿々とした演出は一種の伝統芸能と割り切れば、実に気持ちよく泣ける。テディ・チャンの演出は非常に古典的で頼もしい。

■そして、若者たちの死も、英雄として賛美されるわけでなく、どちからといえば無残な死に様を晒す。ドニーさんにしたって、華々しい死ではなく、馬に正面から体当たりという自爆だし、ニコラス・ツェーに到っては、地面に頭を何度も強打されて虐殺される。

■しかも、必ずしも革命万歳という視点ではなく、ラストの孫文の、ある種能面のような表情の中に、彼らの死を賭けたものが、それに値するものだったのか?という疑問を差し挟む。テディ・チャンのシニカルな視点がそこには込められていたはずだ。

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