対決
1963 スコープサイズ 85分
日本映画専門チャンネル
原作■南條範夫 脚本■柳川真一
撮影■本田平三 照明■島崎一二
美術■加藤茂 音楽■渡辺宙明
監督■安田公義
■全く聞いたことのない時代劇だが、どっこい異色の残酷時代劇で、当時の残酷ブームの便乗作だろうが、忘れられるのは惜しい小品佳作。雷蔵の『手討』と同時公開されており、明らかに配役が低予算なのだが、後年のスプラッター時代劇を先取りしている。
■原作は『シグルイ』という漫画にもなった南條範夫の有名な短編らしいが、実に陰惨なもの。それを非常にコンパクトにうまくまとめた脚本で、剣客の対決とその傍で支える女同士の心理的対決でもある構成が見事で、残虐な殺陣の迫力とともに、女同士の確執が非常に面白い。
■なにしろ主演の藤巻潤が両眼を真一文字に切り裂かれて盲目の剣豪になってしまうという話で、その場面の衝撃も凄いし、その後会得する逆流れという秘剣の殺陣も凄惨で息を呑む。安田公義の演出は手堅い中に衝撃的な見せ場を生かし、低予算なのに美術も相当いい感じ。道場も質感が高いし、小林勝彦、伊達三郎らを撃つ場面の泥濘のセットも上出来。
■ことの顛末を旅の僧の視点で語るというのも演じるのが浜村純なので雰囲気が陰惨な感じになるし、ラストの一騎打ち自体は肩透かしなのだが、なんだか凄いものを観たという印象が強く残る。
■主演の藤巻潤よりもそれを支える、というか運命の女になってしまう下女を藤村志保が演じていて、これが絶品の美しさ。藤村志保、地味ながらやはり凄い女優だったのだ。