大菩薩峠 完結篇
1959 スコープサイズ 106分
NHKBS2録画
原作■中里介山 脚本■猪俣勝人、柴英三郎
撮影■三木滋人 照明■田中憲次
美術■鈴木孝俊 音楽■深井史郎
監督■内田吐夢
■内田吐夢の代表作で、奇怪な剣士机龍之介の悪業を描く、という怪奇時代劇。しかし、単純にお話としては、サブエピソードが乱立して、しかも唐突に割り込んでくるし、観ていて感情移入が困難。というか、単純にサブエピソードが面白くないのだ。それに比べると、机龍之介のサイコぶりが重厚かつ俊敏な剣戟を伴って描かれる部分はやはり凄いと思う。
■長廻しを基調としてチャンバラもたっぷりと間をとって描かれるが、ちっとも間延びせず、固太りの片岡千恵蔵が瞬間閃くような剣捌きを見せ、時代劇の殺陣としては傑作の部類に入るだろう。特に第三部で燃え盛る屋敷を背景に見せる大量殺戮はまさに圧巻。この場面だけでも、この冗長なシリーズに付き合う値打ちはある。こんなに腰の据わった剣戟は、いまどき真似すらできないだろう。
■丘さとみや浦里はるみのエピソードはそれぞれ女優としての力量にも無理があり、冗長に思えるし、仇討ちを誓って龍之介を追う中村錦之助も役柄としては単純。類型的な悪役を演じる山形勲だが、妙にのびのびと型を崩した演じっぷりは、ちょっと見ものだ。結局大した役ではないのだが。