忠直卿行状記 ★★★☆

忠直卿行状記
1960 スコープサイズ 94分
DVD
原作■菊池寛 脚本■八尋不二
撮影■相坂操一 照明■中岡源権
美術■西岡善信 音楽■伊福部昭
監督■森一生

■これはもう環境ビデオ的に観たい一作。寝る前の30分くらいこういう映画を観て、心安く眠りにつきたい。大映全盛期に製作された文芸時代劇の意欲作で、市川雷蔵が心理描写に力を入れるが、もともと脚本が説明的なので、そこはあまり成功していない。しかし、モノクロ撮影の妙味がいっぱいなので、城中の部屋や廊下が艶々した陰影の中でエロく色づく。まあ、もうしたモノクロ映像をエロく感じるかどうかは個人差が大きいが、まあ贅沢な映像であることは間違いない。

■美術は西岡善信だが、こうした題材はむしろ内藤昭のほうが向いているんじゃないかと思う。特に問題なのは、城の石垣の上で演じられる部分で、いわゆる野面のセットなのだが、石垣の奥に広がる空の空間が無限遠に感じられないため、セット撮影の窮屈さが目立つ結果に。大規模なセットなのだが、ここはもう一工夫必要だったと思う。

■あと残念なのは女優の層の薄さ。重要な役を知らない女優が演じている。山内敬子という人だが、さすがに知らない。

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