SPIRIT OF JEET KEUN DO
2004 ヴィスタサイズ 118分
DVD
■アイドル的な韓流スター、クォン・サンウ主演の明朗青春ドラマのようなタイトルだが、実際は70年代末の軍事独裁政権下の韓国社会を男子高校に凝縮して見せた愛と暴力の回想記。監督のユ・ハの個人的な経験をもとにしたプライベートな青春映画だが、さすがに韓国映画は娯楽色に抜かりはない。ブルース・リーの存在にテーマを上手く託した作劇は荒っぽいところもあるが、とにかく説得力は抜群。
■最近見た『桐島、部活やめるってよ』にも相当似ているし、那須博之の『ビー・バップ・ハイスクール』や井筒和幸の映画にも当然よく似ている。上映時間が2時間近いのは、暴力活劇に加えて、主人公の初恋を甘酸っぱく描く部分をかなりたっぷり盛り込んでいるためだ。日本映画ならここはもっと端折って活劇に力点を置くところだろうが、韓国映画は欲張りで盛りだくさんだ。
■これはいくらなんでも誇張だろうという細部が史実に忠実だったりすることは監督のコメンタリーでよく分かる。クライマックスの屋上での決闘についても単純なマチズモと誤解されがちだが、演出意図はそうでないことを説明している。何故番長に後ろから不意打ちを食らわすのかというのも、監督の説明を聞かないと絶対理解できない。もちろん日本の観客としての一般的解釈は可能だが、当時の韓国社会を踏まえた意味づけがちゃんとあるのだ。
■映画のメインは男子校内での番長たちのつばぜり合いと肉体的なぶつかり合いにあり、アクションシーンもよく撮れている。クライマックスでまさにマッチョな肉体美を披露するクォン・サンウの裸体に女性観客は歓喜の声をあげたらしいが、このあたりはブルース・リーを崇拝するボンクラ高校生の妄想劇に近く、非常に痛々しい。ここはカタルシスではなく、哀しみを描くことが主眼だったと監督は語っている。納得。