超強台風
2008 スコープサイズ 94分
DVD
■何から何まで摩訶不思議な謎映画。お話の組み立て、登場人物の配置、ギャグなのか真面目なのか汲み取りがたい演出姿勢、そしてスペクタクルシーンを堂々たるミニチュア特撮で押し通した蛮勇。超強力台風が襲来した中国の港町を守るために市長が自ら最前線に乗り込んだ!という市長=ヒーロー映画で、クライマックスは市長のヒロイズムが全開でとてつもない展開になってゆくのだが、その熱血市長ぶりが実にバカバカしくも熱いので、不思議な感動を誘うのだ。
■監督のフォン・シャオニンという人は中国ではそれなりのヒットメーカーらしく、他の映画でもミニチュア特撮を意欲的に活用しているらしい。本作ではやはり大波にもまれる船舶関係のミニチュアワークは日本では東宝大プールでもなかなかできない大スケールで、さすがに感動するわ。港町のミニチュアもなかなかよくできているが、ミニチュアの破壊についてはまだまだ改良の余地があるだろう。ミニチュア世界の中に小さく人間をデジタル合成ではめ込んだカットが幾つもあり、これはデジタル合成の正しい使い方だ。ちゃんと足元には水しぶきまで合成してあるから凄い!デジタル合成様様だ。
■ちなみにフォン・シャオニンの最新作は『一八九四・甲午大海戦』という日清戦争の黄海海戦を描いた大作で、ここでは円谷英二の『日本海大海戦』を凌ぐかもしれない大規模な艦船特撮を披露している。YOUTUBEで全編見られてしまうのだが、この大特撮はホントに凄いので、必見。オープン撮影で、特に空と雲の実在感が凄い。これはホリゾントではないと思うが、どうやって撮ったのか?戦艦の上にはちゃんとデジタル合成で人間が動き回っているというのも立派。ここは円谷特撮を確実に超えてるわ。波の作りや水柱はなぜか円谷特撮を踏襲していないのだが、監督のフォン・シャオニンはどう考えても東宝特撮マニアにしか思えない。