THE YARDS
2000 スコープサイズ 115分
DVD
■その昔25歳で『リトル・オデッサ』という傑作を放って大注目されたジェームズ・グレイという監督があったが、最近どうしているのかとおもいきや、ちゃんと何作か撮っていた。本作は2作目の監督作で、ちゃんと劇場公開もされている。(知らなかった)ニューヨークの地下鉄整備事業をめぐる汚職事件に関与する若者の姿を描く、一種の社会派映画だが、社会機構の矛盾を告発するという映画ではなく、あくまで巻き込まれた一人の若者の運命逆転劇である。
■共同脚本にはマット・リーヴスが参加しており、大学の仲間だったという。『クローバーフィールド』『モールス』のあのマット・リーヴスとジェームズ・グレイが!
■なんせ、ハリウッド調の無駄に刺激的な演出には背を向けて、往年のハリウッド映画やヴィスコンティをお手本に抑制方向で演出を行うという異色の人なので寡作になってしまうのだろうが、本当はもっと撮るべき人だよ。本作でも映像の色調や照明まで拘って撮っている。そして主役のマーク・ウォルバーグの成長を抑えた演技の中でちゃんと表現させている。この前科者の男とホアキン・フェニックスの運命が交差するところが作劇の見せ所で、見事な逆転劇を見せてくれる。『リトル・オデッサ』ほどではないにしろ、渋い実力派監督だ。
■ゴールデンアンバーの画調とジェームズ・カーンの登場でどうしても『ゴッドファーザー』を連想させてしまうところが弱点になってしまったと思う。でも、ハリス・サヴィデスの撮影はかなりいい。最近の特徴のないハリウッド映画のルックとは異なり、影の使い方に工夫がある。