聞かなかった場所 ★★★

■原作・松本清張、脚本・西岡琢也、撮影・志賀葉一、照明・赤津淳一、監督・黒沢直輔

■夫の死に不審を抱いた女性キャリア官僚がその浮気の証拠を突き止めるが、思い余って愛人を殺害してしまい・・・という松本清張サスペンスで、まあ水準作といった出来栄え。おなじみの西岡、黒沢コンビなので安心して観ていられるし、抜群の安定感がある。

■前半は急死した夫の浮気を探ってゆくサスペンス、後半は真相を知ってしまったことから底なし沼に沈んでゆくサスペンスという構成で、特に後半部分は面白い。おなじみの名取裕子が鬼丸検事ほどではないにしろ、傲慢で居丈高な女性キャリアを演じて妙にリアルなので感心する。脚本の良さもあるが、名取裕子なかなか巧い。犯行の目撃者との遭遇を回避するためにごり押しする辺りが最大の見所。

■名取を脅迫に及ぶ大杉漣も悪くないが、昔ならもっと適役がいたはずだなあ、と思う。渡辺いっけいは「京都地検の女」からの繋がりで友情出演なのだが、少ないシーンながら性格俳優らしく印象に残る。

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