復讐捜査線 ★★★☆

Edge of Darkness
2011 スコープサイズ 117分
T-JOY京都(SC5)

復讐捜査線 [Blu-ray]
■娘を殺された刑事が、事件の背後に、娘の勤めていた研究所にまつわる秘密が関与していることを知り、命の危険が自分にも迫っていることに気づく・・・
■監督のマーチン・キャンベルがBBCで撮ったドラマのリメイクという本作、音楽はハワード・ショアだし、編集は「エグゼクティブ・デシジョン」では監督も務めたスチュアート・ベアードという一流スタッフを揃えた、なかなかの力作である。メル・ギブソン主演の単純な復讐劇かと思いきや、犯罪の背後に潜む巨悪の複合体は、今の日本ではリアルすぎる切実さで、ヒリヒリと心に突き刺さる。ヒロシマナガサキの惨状や東海村の臨界事故を知っている日本人にとっては、ほとんど恐怖映画である。
メル・ギブソンに対する存在として、レイ・ウィンストン演じる闇社会のトラブルバスターが登場し、副主人公として重要な役割を演じる。そのため、脚本の構成が複雑化し、イギリス映画流のアンダーステートメントの色を残した社会派アクション映画となっている。その意味では、かなり渋い映画である。メル・ギブソンの最後の殴りこみは、近頃の活劇映画としては上出来だし、レイ・ウィンストンの人生の決着のつけ方も、異様にカッコいい。”お前にその資格があるのか?”今年一番の名台詞ではないか。
メル・ギブソン久々の主演作だが、くたびれた感じが主人公の心身の憔悴を引き立てて、好演ですよ。レイ・ウィンストンの役柄は、当初デ・ニーロが演じる話もあったらしいが、何で出なかったのか、ほんとにもったいない。日本でこんなお話を撮るなら、原田芳雄が演じるべき役柄だったと思う。
■何にしても、今上映中の映画で、もっとも観られるべき映画であることは間違いない。骨太活劇映画としての痛快さも文句ないし、時代に対する、社会に対する批評性でも一級品だ。

© 1998-2024 まり☆こうじ