『死都日本』

死都日本 (講談社文庫)

死都日本 (講談社文庫)

■「日本沈没」に比肩するディザスターSF小説という売りだが、どちらかといえばトンデモ小説なのではないか。読みどころは、火山学に関する知識と情報と薀蓄の部分で、作者の主張は単純なのだが、肝心のドラマ性は弱い。というか、ドラマらしいドラマは無い。これに比べると『海の底』は立派な小説に思える。
■特に、ラストの首相の大演説がある意味凄いのだが、まさに『日本沈没』『ノストラダムスの大予言』の丹波哲郎を彷彿させる。一種の日本列島改造論である。が、火山列島に国土を有するということの意味を改めて考え直させてくれる点では、本書の意義は小さくないと思う。

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