赤毛 ★★★☆

赤毛 [DVD]

赤毛
1969 スコープサイズ 116分
BS2録画
脚本■岡本喜八廣澤榮
撮影■斎藤孝雄 照明■佐藤幸郎
美術■植田寛 音楽■佐藤勝
監督■岡本喜八

 「侍」でどうも窮屈な様子だった岡本喜八が、喜八節を全開にして一気呵成に突っ走る傑作時代劇。官軍のお先棒を担いで故郷に錦を飾るつもりが、官軍側の裏切りで自滅してゆく農民出身の隊士の姿に仮託して、自身の戦争体験や映画製作当時の学生運動に対する批評を試みたシニカルな意欲作だ。

 貫禄ある立派な人間ばかり演じさせられるようになっていた三船敏郎が農民あがりの隊士を演じて弾けに弾ける。寺田農高橋悦史が岡本組のヒーローを演じれば、徳川幕府に忠節を誓う遊撃一番隊を岸田森草野大悟文学座コンビが颯爽と演じ、さらに浜村純、吉村実子が参戦する。彼らのいかにも岡本喜八らしい人物造形と、それを描き出す映像編集のリズムは、喜八映画のもっとも良いエッセンスを受け継いでいる。

 当時、日本映画界は既に斜陽のど真ん中で、こうした時代劇大作も東宝本線ではなく、三船プロの製作によって辛うじて作りえていたわけだが、そのギリギリの踏ん張り具合が、やややけくそにも見える”ええじゃないか”の群舞にもよく表れている。

 とにかく、岡本組の常連俳優たちが実に気持ちよさげに演じているだけで、観ている方まで幸せな気分に浸れるという有り難い映画である。個人的には岸田森草野大悟の揃い踏みが見られるだけでもう泣ける。

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