シネマ歌舞伎 怪談牡丹燈籠 ★★★☆

シネマ歌舞伎 怪談牡丹燈籠 MOVIX京都(SC9)
原作■三遊亭円朝 脚本■大西信行 演出■戍井市郎 監督■中谷宏幸
出演■片岡仁左衛門坂東玉三郎坂東三津五郎上村吉弥中村錦之助

シネマ歌舞伎初体験。ハイビジョン撮影は予想以上の解像度で、映像の鮮明さでは普通の映画と遜色ない。舞台中継独特の照明効果もあり、色彩表現については割り引いて考える必要があると思うが、映像品質は十分に劇場での鑑賞に耐える。途中に15分のトイレ休憩を挟む正味155分の作品。
■2幕構成で、1幕で新三郎がお露に取り殺されるまで、2幕は伴蔵&お峰、源次郎&お国が自滅するまでを描く。新三郎&お露の怪談場面は意外と短く、新三郎に繋がる伴蔵&お峰の物語と、お露に繋がる源次郎&お国の2組のカップルの生き死にを中心に劇化されている。
山本薩夫の「牡丹燈籠」では西村晃小川真由美が演じた伴蔵&お峰を仁左衛門玉三郎が演じるのだが、映画版とはニュアンスが違って、小ずるい小悪党カップルではなく、貧乏から抜け出したい一心で幽霊に百両を吹きかける市井の庶民という位置づけ。そのため、2幕の二人の破滅も今ひとつ因業な感じが無く、あっさりしている。源次郎&お国の自滅も蛍の乱舞が怪異の風情を添えるが、怪談噺の風情は薄く、食い足りない。
■伴蔵&お峰の、橋田寿賀子的というか、松竹新喜劇的ともいえる掛け合いで十分に笑わせる見せ場が用意されており、それはそれで素直に楽しいのだが、貧乏な奉公人の女房を演じる玉三郎が、正直実力不足。仁左衛門も少々硬いのだが、玉三郎の演技にも深みが無く、コメディとしては辛うじて成立しているが、観ていて危なっかしい。

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