Z ★★★☆

Z
1969 ヴィスタサイズ 126分
BS2録画

■コスタ・ガブラスギリシアで63年に起きた自由主義者ランブスキ暗殺事件を描いた小説を映画化した、という触れ込みの社会派映画。とある国で、野党の国会議員(イブ・モンタン)が政治集会後に右翼の動員したゴロツキに撲殺されるが、憲兵や警察は交通事故死として処分することを望み、予審判事(ジャン=ルイ・トランティニャン)の追及に対して捜査を妨害するが・・・

■何しろ、素材となったランブスキ暗殺事件そのものが日本人には不案内なので、どの程度リアルだとかいうことは不明だが、却ってそのことがドラマに普遍性を加えている。社会派映画とはいうものの、演出は実に軽快で、ポップで、時にシュールだ。それが60年代映画の風俗ともいえるが、同時期の日本映画界のこうしたジャンルの映画と比較すると、明らかに過剰にファッショナブルかつコミカルだ。

■政治的暗殺というテーマなのに、暗殺方法が射殺ではなく、刺殺でもない棍棒による撲殺、しかもオート三輪(日本製でカミカゼと呼ばれる!)ですれ違いざまという、映画史的に見てもきわめて珍しい手法となっているのも野蛮かつ暴力的で凄い。Zと間違えられた議員が執拗にボコボコ殴られ続けるのも怖い。右翼の暴力性を端的に表現している。

■撮影はゴダールとのコンビが有名なラウール・クタールで、灰色の基調の中に、原色を配した映像設計は明らかにリアリズムではない。BS2の放送が、またバリバリに綺麗なマスターで、60年代末期の世界を包む空気を鮮やかに蘇らせる。

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