桜田門外ノ変
2010 ヴィスタサイズ 137分
ユナイテッドシネマ大津(SC2)
原作■吉村昭 脚本■江良至、佐藤純彌
撮影■川上皓市 照明■川井稔
美術■松宮敏之 音楽■長岡成貢
監督■佐藤純彌
■井伊直弼暗殺を実行した水戸藩脱藩浪士たちが、決起に至るまでの政治状況の回想と、重大な裏切りにあった浪士たちが追い詰められて自滅してゆく様を並行して描く、佐藤純彌初の時代劇(『空海』とかあるけど。。。)にして、東映実録映画路線の意外な復活作。事件の顛末が2・26事件に相似しているのが奇妙。主演の大沢たかおの顔がまったく映画的でないのと、映像から完全に浮き上がった貧弱な映画音楽が最大の瑕だが、いまどき珍しい硬派時代劇。
■冒頭に襲撃シーンを置いて、事件前と事件後を並行して語るという脚本の構成は意表を突くが、時制の行き来はスムーズではなく、さすがにかっこ悪いのだが、まあ実質の制作が東映だから荒削りは織り込み済みだ。梯子を外された若者たちが滅びてゆく様を、実録路線スタイルで描き出すから、往年の東映映画ファンはそれだけで魂鷲掴みだ。(続く)
■VFXは東京現像所と日本エフェクトセンターが担当しており、単純な作画合成から雪の合成(多分)や殺陣での流血シーン、自刃シーンの日本刀のCG合成など、結構大活躍。特に、深手を負った水戸藩の若者たちが自刃する場面の、身体を貫く日本刀の描写は秀逸。これまでも何本もの日本映画で技術的には完成されたVFX表現だが、刃物の痛々しさが実感されるのはドラマ的な効果が万全だったからだろう。
■制作はユニークブレインズ。