タナカヒロシのすべて ★★★

タナカヒロシのすべて デラックス版 [DVD]
タナカヒロシのすべて
2005 ヴィスタサイズ 103分
DVD 
脚本■田中誠
撮影■松本ヨシユキ 照明■矢部一男
美術■安宅紀史 音楽■白井良明
CG制作■スペシャルエフェックススタジオ
監督■田中誠

■かつら工場に勤める主人公(鳥肌実)はクッキーのおみくじで大凶を引き当てると、次々と父母を亡くし持ち家を退去せざるをえなくなり、リフォーム詐欺に引っかかり、次々と不幸が押し寄せる・・・
■小椋悟の製作なので一筋縄ではいかない異色作で、スローライフ仕様のコメディ。ある意味で三木聡の緩い感じのコメディにも通じるところがあるのではないか。
田中誠のテーマとしては、「雨の町」同様に子と親の関係を中心としたホームドラマということで通底している。なにしろ主人公を演じるのが鳥肌実なので、胡乱な雰囲気を醸し出しているのだが、不幸の連続のエピソードを能天気な感じの底抜けの明るい楽曲に乗せて明るく物語るというところに、ウィットが感じられる。
■とはいえ、この主人公、本人は気づいていないが、なかなかモテモテで、ユンソナ小島聖矢沢心市川実和子といった錚々たる(?)女性たち全員に、それなりに好意を寄せられるのだ。結局誰と気持ちを通わせることができるのかというのが、ドラマの焦点になるのだが、それが明らかになるラスト付近の展開はドラマの収拾としては残念ながら説得力に欠けている。母親(加賀まり子)の葬式の夜に、喪服で身悶えるような奇妙なしぐさで主人公を誘う(ように見える)看護士役の小島聖が色っぽくていいし、主人公にストレートな助言を残すデリヘル嬢の矢沢心はリアリティの点で申し分ない。テルミンと俳句の会の市川実和子も、いつもながらの不思議ちゃんぶりを遺憾なく発揮して、とにかく異様な存在感は絶品。ほんとうはホラー映画にこそ似つかわしい女優だと思うのだが。どうも、田中誠は女優を魅力的に、色っぽく撮るという部分に貴重な才能を持っているのではないか。
■製作はプログレッシブ・ピクチャーズ、ジェネオン・エンターテイメントほか、企画・制作は小椋事務所、プログレッシブ・ピクチャーズ。

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