アフタースクール ★★★★

アフタースクール (角川文庫)
アフタースクール
2008 ヴィスタサイズ 102分
MOVIX京都(SC7)
脚本■内田けんじ
撮影■柴崎幸三 照明■吉角荘介
美術■金勝浩一 音楽■羽岡佳
監督■内田けんじ

■全くなんの事前情報も持たずに、間接的な感想だけを頼りに観にいったのだが、それは大正解だった。いったい青春映画なのか、コメディ映画なんか、犯罪映画なのか、なんの構えも無く、虚心坦懐に観ることができたのだが、結果的にその全てが包含された軽快な傑作映画だ。
■内田けんじの映画は初めて観たのだが、三谷幸喜に強力ライバル出現といった感じで、劇映画の粋を凝らしたストーリー・テリングを発揮する。三谷幸喜のコメディは子供っぽさが魅力であり弱点でもあるのだが、内田けんじはもっと大人だ。ウッディ・アレンの話術と比較すれば褒めすぎになるかもしれないが、一番に連想したのはウッディ・アレンの映画だった。途中まではタランティーノガイ・リッチーといった若手のヒネたストーリーテラーの影響を意識しながら観ていたが、後半で一気に裏切られた。もちろん良い方向にだ。映像表現も若者向けの派手な画作りは一切無く、地味に着実に組み立てられている。まあ、地味なのでインディーズ系の若手スタッフかと思いきや、超実力派スタッフが揃っている。
■とにかく、そのひねりの効いた練られた脚本に驚かされるし、趣味の良い演出にも唸らされた。配役では佐々木蔵之助が持ち前のうす暗さを見事に発揮して、子供のまま大人になったような大泉洋と好対照を見せる。この人もユースケ・サンタマリア同様に一見明るく見えながら、犯罪映画屋ホラー映画で持ち味が正しく発揮される役者なのだ。そこがテーマになってくるのだが、アフタースクールというタイトルも上出来。放課後の話ではなく、卒業後の話というところがミソで、もう大人になってしまったわれわれのハートを直撃する。
■おそらく今年の邦画界の目玉作品といえる傑作で、内田けんじには、この調子で年に1作ずつ新作を見せて欲しいものだ。ウッディ・アレンと内田けんじがいれば、当面、大人映画には困らない。
■製作はクロックワークス、TBS他、制作プロダクションはシネバザール。

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