ザ・ハリケーン ★★★

THE HURRICANE
1999 スコープサイズ 145分
BS2録画


 差別主義者の刑事のために少年院へ送られ、脱走後に軍に入るが、発見されてまた投獄、出所後にボクサーとして成功するが判定を歪められ、遂に殺人事件の容疑者として逮捕され、冤罪により終身刑を言い渡された実在の黒人ボクサーは、彼の自伝を読んで感動したカナダに住む黒人少年との文通により支援者を得て、連邦裁判所へ再審請求を行う・・・

 デンゼル・ワシントンが実在のボクサー/終身犯を演じる実録大作。監督のノーマン・ジュイソンはベテランらしく、黒人差別の内実の詳細には立ち入らず、それは厳然と当たり前のように存在するものという前提から物語を構築し、敢えて淡々と特異な人生を歩まされることになった男の年代記を描き出す。短兵急に主義主張をまくし立てる映画ではなく、敢えてテーマそのものは声高に叫ばずに、主人公の人生そのものとその人間像自体に全ての演出意図を凝縮させた演出姿勢はさすがの余裕ぶりだ。おまけに撮影監督はロジャー・ディーキンスだから、過不足の無い的確な画角で演技をしっかりと見せる。

 脇役にも静かな男臭さを醸し出すベテラン俳優を据え、サロキン判事を演じるロッド・スタイガーの曲者ぶりはクライマックスを際立たせるし、主人公とさりげなく意気を通じ合う刑務所の看守(長?)を演じるクランシー・ブラウンは役得だろう。

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