明智光秀 神に愛されなかった男 ★★★☆

脚本■十川誠志
撮影■津田豊滋 照明■川井 稔、藤川達也
美術監督西岡善信 美術■重田重盛
音楽■菅野祐悟 操演■鳴海 聡 CGアドバイザー■中野 稔
演出■西谷 弘


 明智光秀の謀反の意図を大胆に推測したビデオ撮影によるスペシャル時代劇だが、脚本を十川誠志が書いているので見逃すわけにはいかないだろうと予測していたが、期待以上の力作で、正月早々から時代劇の面白さを堪能した。

 光秀(唐沢寿明)、秀吉(柳葉敏郎)、信長(上川隆也)の3者の関係に焦点を絞り込んで、史実を大幅に簡略化してテーマを強調した作劇は見事なものだ。天下布武の名の下に、戦によって領地を拡大することにしか興味が無く、その地で暮らす民衆の生活などには全く関心を抱かない信長の冷酷さに愛想を尽かし、民衆が平和に暮らすことの出来る戦の世界を願いつつ坂本の地でその実験を試みるが自分にその能力が無いことに気づかされた光秀が、自らに代わって自分の理想を託すことができる人物として選んだのが秀吉であり、信長を除き、秀吉を信長の正統な後継者に据えるため、敢えて汚れ役を引き受けて謀反を決意するという筋書きのシンプルな力強さはまさに時代劇の醍醐味だ。役者陣では、上川隆也の信長が当たり役と呼ぶに相応しいカッコ良さで圧巻。

 映像京都が製作協力だが、キャメラは津田豊滋という正直いってよく素性のわからない人物で、色彩設計のあざとさや薄暗い場面の平板な照明など、映像設計に関する疑問点は数多い。西岡善信が低予算のなかで延暦寺の炎上などをロケセットで表現するのは心強いが、兵の数がやけに少ないのは如何なものか。こうした部分こそデジタル合成の威力の見せ所ではないのか。

 と文句を言ったところだが、なぜかCGアドバイザーの肩書きで中野稔が参加しているのが興味深く、それどころかVFXには浅野秀二の名があるように、リンクス・デジワークも参加しており、えらく豪華なスタッフ構成だ。中野稔がまだ現役で活躍中だったとは思いもよらなかった。作画合成も数多く、それほど精度は高くないが、まずまずの出来栄えだろう。

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