祇園の姉妹 ★★★☆

祇園の姉妹
1936 スタンダードサイズ 69分
BS2録画
原作■溝口健二 脚色■依田義賢
撮影■三木 稔 
監督■溝口健二


 なにぶん戦前の映画なので、現在は30分程度短縮されたバージョンしか残っていないらしい。本当は95分程度の尺らしい。確かに、個々の場面は1シーン1カットにこだわった息の長い演出なのだが、えらくテンポが早いのは、シーンそのものがいくつか抜け落ちているせいなのだろう。
 後の「祇園囃子」は姉妹編ということになるのだろうが、本作では男社会の犠牲となることを嫌って、男を手玉にとろうとして手痛いしっぺ返しを喰らう山田五十鈴のキャラクターが強烈で、戦前という時代を考えると相当に突出した人間像ではなかったかと想像される。
 番頭から手を引くように説得に来た進藤英太郎山田五十鈴に丸め込まれて逆に旦那になってしまうことを約束する場面の1シーン1カットの移動撮影など凄い。台詞もよく練られているし、演技的にも圧倒的なレベル。志賀廼家弁慶とか大倉文男といった祇園の旦那衆の存在感も素晴らしく、旦那遊びとはこうしたものであったかと勉強にもなる。

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