SUPERMAN RETURNS
2006 スコープサイズ 154分
ユナイテッドシネマ大津(SC3)
故郷の星クリプトンの名残を求めて地球を去ったスーパーマン。収監されていたレックス・ルーサーは出所し、富豪の未亡人を騙して巨額の財産を手にして、北極に眠るスーパーマンの遺跡からエネルギー水晶体を盗み出す。5年ぶりに地球に戻ったスーパーマンは、ロイス・レインが結婚して子供を持ったことを知る・・・
クリストファー・リーブの「スーパーマン」はテレビで断片的に見ただけのだが、ジョン・ウィリアムスのテーマ曲とスリットスキャン(を模した)のタイトルだけで映画1本分の興奮を味わえるのが、このシリーズならではのありがたみだ。ほんとに、ここぞという見せ場にテーマ曲が高鳴るだけで、ほかのことはもうどうでもいいだろうという痛快感がせり上がり、切ないほどの感動が胸の中に漲るのだ。
主役のブランドン・ラウスの清潔感は絶品といえるが、レックス・ルーサーのケヴィン・スペイシーはちょっと重すぎるだろう。今回もっとも違和感があるのはロイス・レイン役のケイト・ボスワースで、いかにも色気のない気が強いキャリアウーマンという役柄には似合うのだが、今作がスーパーマンとの恋愛劇に焦点を絞って作られていることから考えると色気が無さ過ぎるだろう。その風貌をはじめ、あまりに雰囲気が硬すぎて、大人の女の心のゆれと戸惑いを短い時間の中で効果的に打ち出すことができていない。
さらに、VFXについては大変な物量で圧倒するが、あまりに垂れ流ししすぎるのは逆効果。中盤の試験飛行機を救出する場面が最も優れた見せ場で、クライマックスの大陸隆起のスペクタクルは、CGの見せ場としては優れた質感を示すものの、アクションの見せ場としては散漫に終わってしまう。どこにミニチュアを使い、どこからがCGなのか全く区別がつかない完成度の高いビジュアルで、特にフルCGのはずの海面の描写は見事なだけに、勿体無い。
このあたりの見せ場構成のバランスの悪さは、VFX濫用がもたらした悪い風潮だ。全編に派手なVFXを散りばめるよりも、もっと見せ場を絞って、一点豪華主義でクライマックスに視覚効果を集中するほうが、観客としてもカタルシスが高まり、ありがたいのだが、近年のハリウッド超大作は何か勘違いしているようだ。巨額の製作費を浪費しているとしか思えない。