最後の特攻隊 ★★★


最後の特攻隊 1970 スコープサイズヴィスタサイズトリミング版) 122分
レンタルV
脚本■直居欽也
撮影■飯村雅彦 照明■銀屋謙蔵、梅谷茂
美術■中村修一郎 音楽■津島利章
特撮監督■堀江毅 特撮美術■成田亨 特撮操演■平鍋巧
監督■佐藤純彌


 特攻攻撃に出ながら生還した宗方大尉(鶴田浩二)は、神風特別攻撃隊を途中で撃墜させることなく、戦場まで送り届けるための直掩隊の指揮を命じられる。新任の矢代中尉(高倉健)からは卑怯者と罵られるが、宗方の兵たちへの温情溢れる接し方を知り、自分の過ちに気づき、自身の出撃の際の直掩を依頼するのだった。そして彼らが出撃して行った直後、日本が既に無条件降伏していたことを知る・・・

 中盤に、母親が気がかりなあまり零戦故障と嘘をついて逃げ帰ってきた渡部篤史のエピソード、梅宮と山本麟一の兄弟のエピソードが盛り込まれ、いかにも東映的な満艦飾な脚本だが、山本麟一など悪役以外の役としては代表作とよべるのではと思われるほどいい役を貰っている。既に降伏を決めていながらも、終戦発表のギリギリまで特攻隊の出撃を援護し続けた鶴田が、没せんとする夕陽に零戦を駆って飛び去ってゆくラストカットだけをカラーで撮影して、鶴田の心象を凝縮した佐藤純彌の演出の確かさも特記しておきたい。

 昭和45年の製作で、明らかに低予算だが、特撮班が編成され、円谷プロを離れた平鍋巧が操演で参加しているので、空中戦は案外よくできている。空中戦の構成もかなり複雑にミニチュア要素を組み合わせており、大空戦というイメージを狙っていることがわかる。滑走路を離陸するミニチュアと野外ロケを合成した意欲的な合成カットもあり、低予算のわりにはよく頑張っている。ところが、ラストの特攻場面の敵戦艦の撮り方はまるで素人で、まったくミニチュア撮影として成立していない。成田亨の「特撮美術論」のスナップによれば、かなり大型のミニチュアの艦船が用意されたようだが、撮り方がこうも拙くては、勿体無い限りだ。

 特撮監督の堀江毅は「悪魔くん」や「イナズマン」の特撮にクレジットがあり、矢島信男と一緒に東映の特殊技術課(その後、特撮研究所)にいたスタッフと思われる。その後は映画演劇関連産業労組共闘会議(映演共闘)議長を務めているようで、労働組合関係にシフトしていったようだ。やはり東映は組合活動活発が活発なようで、東映映画の表の歴史と東映労組活動の歴史を対置してみると、新たな発見がありそうな気がする。


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