カーズ ★★★☆

CARS
2006 スコープサイズ 122分
TOHOシネマズ二条(SC6)


 常に正攻法のピクサーのCGアニメに対抗するために、ハリウッドの他の製作会社はCGアニメを製作する際には斜に構えた発想で望むしかないのだが、今作もピクサーらしい王道の作りで安心して見ていられる。しかも、監督は久々に復帰のジョン・ラセターで、ピクサーのなかでもこの男の映画は格がひとつ上という感じだ。
 登場するキャラがすべて車というふざけた発想のこの映画でも、王道の作劇術は健在で、「トイ・ストーリー2」や「バグズ・ライフ」のほうが上出来という印象はあるが、冒頭とラストのレースのアクション演出については見事に巧いものだ。中盤の地図から消され、忘れられた車たちが住む町での経験が、主人公のレースの戦い方と生き方にどんな変化をもたらしたかが、的確に対照されている。この綺麗な計算の立て方がピクサー社の社風であり、財産だろう。
 ちなみに、字幕版より日本語吹き替え版のほうがスクリーン数が多いようなのだが、いつからそんなことになってしまったのか?吹き替え版も悪くないが、字幕版のオリジナルキャストも気になる。なお、エンドクレジットでの追悼のしかたのセンスのよさも、日本映画ではなかなか真似できない至芸だ。

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