三婆 ★★★☆

三婆
1974 スタンダードサイズ 101分
高槻セントラル
原作■有吉佐和子 戯曲■小幡欣治 脚本■井手俊郎
撮影■村井 博 照明■今泉千仞
美術■阿久根 巌 音楽■山本直純
監督■中村 登


 社長の死後、正妻(三益愛子)の屋敷に社長の姉(田中絹代)と愛人(木暮実千代)が転がり込んで、三人の婆の共同生活が始まる、いがみ合う三人だが・・・
 戯曲・小幡欣治とクレジットされているところをみると、有吉和佐子の原作による舞台版を映画化したものらしい。逆の順序かと思っていたが、違うらしい。
 藤井浩明の行動社と東京映画の提携作品で、監督は松竹の中村登という異色作。東宝の混乱期ならではのことだろう。
 スタンダードサイズで、照明も明るく、メリハリに欠けるので、テレビ映画のような映像なのだが、みもふたもない露骨な描写はいかにも70年代の日本映画だ。三人の婆の老醜を笑いの種にしながら、最後には和解と労わりが用意されて、昭和49年という時代を浮き彫りにする、さすがに井手俊郎のソツのない脚本は見事なものだ。
 昭和38年〜39年の東京オリンピックを挟んだ高度経済成長期の物語の最後に10年後(映画制作当時)のエピソードが付加され、ほとんどお化け屋敷状態の三婆(+有島一郎!)の現在が提示される。ここで、10年前に呆れて老人たちを見捨てたことを後悔する小鹿ミキにドラマが集約されるところに作劇の巧妙さが結実している。予想外の佳作なのであった。

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