不信のとき ★★★☆

不信のとき
1968 スコープサイズ
高槻松竹
原作■有吉佐和子 脚本■井手俊郎
撮影■小林節雄 照明■渡辺長治
美術■渡辺竹三郎 音楽■富田 勲
監督■今井 正


 クラブの女(若尾文子)にせがまれて子供をつくった男(田宮二郎)は、本妻(岡田茉莉子)にも子供が出来たために、悲喜劇を演じることに・・・

 人工授精という素材を扱って、各所にできた子供は本当に自分の子供なのかわからなくなる様を軽妙に描いた娯楽色の強い文芸映画で意外な快作。脚本が井手俊郎なので、安心して付き合っていられる。ある種、ウッディ・アレン的な話術の軽妙さといったら褒めすぎか。

 二人の女(さらに岸田今日子まで絡んでくるのだが)に翻弄される田宮二郎が「白い巨塔」のあとなので、いささか重過ぎるのが苦しいが、若尾も対する岡田も好演で、岡田のアップの目元の表情など実に美しい。所々で色調が黄色くすんでいるが、比較的新しいュープリントなので、小林節雄の彫りの深い、それでいて女優の衣装や表情に神経の行き届いた渋い撮影が堪能できる。素材のわりに、少々、質感が重厚すぎるかもしれないが。

 一方の、三島雅夫加賀まり子のエピソードも巧く絡んでいて、本当にウッディ・アレンみたいだ。三島雅夫の見せ場が多いのも嬉しい。

 今井正の演出はさすがに実力派で、そつが無いが、これも少々重過ぎる感じだ。心理的なショック場面の派手な効果音がギャグのように聞こえるのは、計算なのだろうか。

 ただ、冒頭のヌード・スタジオであっさりトップレスになる端役の笠原玲子の扱いが哀しいのだが・・・

© 1998-2024 まり☆こうじ