鶴八鶴次郎
1938 スタンダードサイズ 89分
BS2録画
原作■川口松太郎 脚色■成瀬巳喜男
撮影■伊藤武夫
装置■久保一雄 音楽■飯田信夫
演出■成瀬巳喜男
寄席の名コンビとして人気の絶頂にあった新内語りの鶴次郎(長谷川一夫)と三味線の鶴八(山田五十鈴)は、芸熱心ゆえに喧嘩がたえず、鶴八は大家に縁付き、鶴次郎は傷心をかかえてドサ回りに堕ちる。興行師の計らいで再起をかけてコンビを復活するが・・・
1934年のアメリカ映画「ボレロ」を下敷きにした映画らしいが、ウェルメイドな芸道人情モノである。1、2箇所音声の欠落があり、場面によってフィルムの鮮明さにもバラつきがあるのが残念だ。フィルムの調子のいい箇所については、柔らかで微妙な陰影がモノクロ撮影の美しさをよく伝えている。鶴八が鶴次郎に嫁に行くことを切り出す湖畔(?)のロケ撮影の光線の具合など絶妙だ。
鶴次郎の世話を焼く藤原釜足がうまい助演で、主役の人間像を盛り立てる。三島雅夫が昭和13年に既にえらい貫禄を見せるのにも驚いた。
成瀬に話術と巧妙なカッティング技巧は既に確立されており、映像話術だけでも十分堪能させてくれる。