THE 有頂天ホテル
2006 ヴィスタサイズ 136分
TOHOシネマズ高槻(SC2)
脚本■三谷幸喜
撮影■山本英夫 照明■小野 晃
美術■種田陽平 音楽■本間勇輔 視覚効果■泉谷 修
監督■三谷幸喜
新年間近の大晦日の架空のホテルを舞台に、様々な人間が入り乱れて繰り広げる人間喜劇を賑々しく描く三谷幸喜監督第三作。
にぎやかな趣向は盛りだくさんで、三谷幸喜らしい子供っぽいギャグのアイディアがそれなりの笑いを生み出し、気楽に2時間以上を楽しむことはできる。ただし、「ラヂオの時間」「みんなのいえ」のような三谷幸喜のものづくり賛歌路線からは外れており、ホテルというサービス業を素材としたものの、前2作ほどの切実な内的必然性は感じられない。そのことがクライマックスがぐずぐずに崩れてゆく失策に繋がっているのだろう。
キャストではなんといっても松たか子が設け役。というか、年齢相応の等身大のリアルな役柄を嬉々として演じており、ラストの演説に説得力はないものの、女の可愛らしさをうまく演じている。一方の麻生久美子は案外生かされず、損な役回りだったようだ。
せっかく東宝の大ステージを使って大きなセットを組んだのに、撮影設計がまずく、東宝の正月映画らしい華やかさに欠けるのは難点。セットに重厚さを加味しようという狙いだろうが、もっと黒味を減らして、クリアな色調とシャープな輪郭、そして東宝映画らしい能天気な照明で彩るべき素材ではないか。そういう意味では藤石修あたりが適任のはずだ。東京の夜景をバックに屋上で述懐する佐藤浩市の場面も、もっと街の明かりが浮かび上がらないと夜景の狙いが生かされない。