妻よ薔薇のやうに ★★★☆

妻よ薔薇のやうに
1935 スタンダードサイズ
BS2録画
原作■中野 實 脚色■成瀬巳喜男
撮影■鈴木 博
装置■久保一雄 音楽監督■伊藤 昇
演出■成瀬巳喜男


 ヒロイン(千葉早智子)は恋人(大川平八郎)と婚約するため、愛人のもとで生活している父親(丸山定夫)のもとをはじめて訪ねて、愛人一家の心の通い合った暮らしぶりを知る。一旦は娘と東京に戻った父だが、妻とはしっくりといかず・・・
 成瀬巳喜男出世作だが、ヒロインと婚約者との若々しいやり取りなど、さすがに若手監督らしい溌剌とした演出で、後年の作風からすれば別人といった印象もあるが、卓越したカッティングの妙技は確かに成瀬だ。
 ヒロインを狂言回しとして、二人の妻の対比がなされ、世代のコントラストもよく効いたうまい脚本は成瀬自身による。金鉱の発見に夢を託す父親の不甲斐なさ、だらしなさも容赦なく、そうした父親にうまく寄り添うことのできない母親の限界も辛らつに描かれ、ヒロインが最後に呟く「お母さんの負けだわ」の一言が残酷な一撃を加える。
 表面上は明るく軽快な、いかにも東宝的なリズムに乗せて、奇妙な夫婦関係のなかに人間的な弱さと人間関係の心理的な機微を描きこむ手際は鮮やかなものだ。
 ヒロインの家庭状況に心を砕く叔父を演じて、歪な家庭環境に対して非常に常識的な意見を述べる藤原釜足が、観客の代弁者として痛快な役どころとなっており役得。

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