『四つの恋の物語』

基本情報

四つの恋の物語
1947/スタンダードサイズ
(2001/12/13 BS2録画)
初恋
脚本/黒澤 明
撮影/川村清衛 照明/田畑正一
美術/松山崇 音楽/早坂文雄,栗原重一
監督/豊田四郎
別れも愉し
脚本/小国英雄
撮影/木塚誠一 照明/伊藤一男
美術/江坂実 音楽/早坂文雄,栗原重一
監督/成瀬巳喜男
恋はやさし
脚本/山崎謙太
撮影/伊藤武夫 照明/岸田九一郎
美術/北川恵司 音楽/早坂文雄,栗原重一
監督/山本嘉次郎
恋のサーカス
脚本/八住利雄
撮影/中井朝一 照明/平田光治
美術/平川透徹 音楽/早坂文雄,栗原重一
監督/衣笠貞之助

感想(旧HPから転載)

 4話からなるオムニバス映画で、第一話「初恋」は池部良とまん丸顔の久我美子が主演の青春映画。池部良の両親が志村喬杉村春子という豪華キャストだが、池部良久我美子がなんと木登りを披露する場面が忘れがたいものの、特に優れたものではない。
 第二話「別れもたのし」は短編映画のお手本といった手堅い作りの佳作で、おそらく海外の小説からアイディア翻案しているに違いないと思わせるほど日本映画離れした洗練された恋愛ドラマに仕上がっており驚かされる。
 木暮実千代が愛玩してきた若い愛人が素朴な娘を真剣に愛していることを知って、なんとか引き留めようとするが、最後には自分にも新しいパトロンができたと嘘をついて別れる決心をするという大人の恋愛劇を間然とするところのない心理描写で描ききったのは、さすがに巧い成瀬巳喜男。他の代表作と比べると演出姿勢にも若干サービス精神を増量しているように見受けられ、東宝映画というよりも、古巣の松竹映画を思わせる、俗ながら繊細な技術に裏打ちされたメロドラマだ。
 続く第三話「恋いはやさし」は小劇団を舞台とした榎本健一と若山セツ子の恋愛劇をエノケン一座のお馴染みの出し物を織り交ぜながら展開するベテラン山本嘉次郎の、これまたなかなかの秀作。エノケンオペレッタの得意芸を堪能させながら、舞台裏での劇団を辞めて田舎へ帰るといいだした若い団員の娘になかなか本心を伝えられない榎本健一のじれったい姿を織り込んでゆく話術の冴えが見所で、彼女の忘れていった手袋の使い方も定石に一ひねり加えた辺りの上手さには感服する。闇屋のおばさんを演じる飯田蝶子が抜群に良いし、エノケンという喜劇俳優の体つきや演技や芸の特異性がはっきりと確認できるという意味でも案外貴重な作品ではないかと思う。
 第四話「恋のサーカス」はサーカス団での殺人を巡って団の内部での愛憎劇が解き明かされてゆくミステリーだが、団員の台詞だけで展開されるため説得力に欠ける。この年の衣笠貞之助は「女優」といいこの作品といい、特異な集団の内部に萌芽する内紛劇ばかりを撮っていたように見えるのだが、東宝争議の影響で生まれたこのオムニバス映画の内実を最も直裁に物語っているのが、このエピソードなのかもしれない。

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