『ファイナル・デスティネーション』

ファイナル・デスティネーション
(FINAL DESTINATION)
2000/スコープサイズ
(2001/1/20 美松劇場)

感想(旧HPより転載)

 主人公の観た予知夢によって飛行機の墜落事故を回避した7人の高校生たち。しかし、死すべき運命にあった彼らを死神は容赦なく彼らの最終目的地に連れ去ろうとするのだった。果たして死の連鎖を逃れる術はあるのだろうか?

 アメリカのホラー映画界に久々に頭のいい映画が誕生した。確実にホラー映画史に名を刻む新しい傑作の登場だ。不吉な符合や予兆の積み重ねと冷酷非情な死神の人間狩りを、剃刀のようなサスペンスとともに掟破りのショッカーで加速する完全無欠の虚仮威し映画でありながら、なおかつ公正なゲームの規則に基づいた実に理知的なホラー映画である。

 ただ、惜しいと思うのは迫り来る死の恐怖をジェットコースタームービーに仕上げなければならなかったこの時代の要請の不条理さに腹が立つくらいで、7人の高校生達を襲う怪異の描写がもっと間接的で暗示的なものであれば、60年代の怪奇映画のように仕上げることもできたはずなのだ。特に一つ目のクライマックスになる女学生の救出シーンなどはそれまでの鮮烈なサスペンス仕立てから急に陳腐なスペクタクルに転換してしまった残念な場面だ。ただしこの後にちゃんともう一ひねり用意されているので、油断も隙もないのだが。

 単純なショッカー狙いの演出の見せ場も数多いのだが、驚くべきことはその悉くに成功を収めていることだ。例えば冒頭の離陸した旅客機が空中で爆発炎上する様子を空港の窓の外に小さく、しかも主人公達の芝居の遥か遠く背景に入れ込んで、さらに爆発してから数秒後に窓ガラスが突如砕け散るという演出の間合いの見事さは絶妙で、このシーンの完成度だけで1800円の値打ちはあるというものだ。

 さらに、その後には女子高生がどう見ても中空から突如湧きだしたとしか思えないタイミングで画面にフレームインしてくる大型バスに轢かれるという掟破りの過激なショッカー演出も見事成功し、観客の心理操作に卓越した手腕を見せつける。

 「Xファイル」シリーズは実は全く観ていないのだが、このジェームス・ウォンという演出家の次回作には大いに期待してもいいだろう。主人公達が今から乗り込もうとする旅客機が空港の窓越しに大写しになるカットでは単純なロケ撮影ではなく、人工的な合成カットならではの空間の不自然さを逆手に取って巨大なジャンボジェットから不吉な表情を引き出して見せた離れ業などただただ驚嘆するばかりだ。

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