アナザーXX・マトリの女

アナザーXX・マトリの女
脚本・竹橋民也、山口セツ
撮影・田口晴久 照明・井上幸男
美術・山崎秀満 音楽・Fuji-Yama
監督・池田敏春

感想(旧HPより転載)

 麻薬密輸ルート告発のため、タオと呼ばれる捜査協力者と連絡をつけるべく歌舞伎町に潜入捜査を命じられた東京都麻薬取締官(マトリ)の坂上香織は、ヤクザとチャイニーズマフィアの両方に通じた日本人と中国人の混血・隆大介に接近する。彼の信用を得るため、乳房に刺青を入れられ、シャブを打たれながらも、タオと思しき彼と愛し合うが、タオの正体は隆大介ではなく、意外な人物だった。

 その昔、伊丹グリーン劇場のオールナイトで、館内にあまりに場違いな小さな可愛い女の子がいるので驚いていると、昼間のイベントから流れてきたゲスト審査員の坂上香織だったという嘘のような本当の話があったのだが、フジテレビ「世にも奇妙な物語」の初期の傑作「噂のマキオ」に主演したことでも知られる彼女も、路線変更により惜しげもなく脱ぎまくっているものの、どこか痛々しげで、特に今回のような演技力よりも手足の長さや背の高さといった人体のシルエットのモデル的な美しさや、動きの切れの良さのほうが重要な要素となるアクション映画にとって、典型的なアイドル体型の彼女は全く相応しくない。拳銃を構える姿勢の不格好さや、歌舞伎町を走り回るアクションの無惨さ等、どう考えてもミスキャストである。

 「鍵」では久々に健在をアピールした池田敏春だが、そうしたキャスティングの無理もあって、今回は全く生彩がない。同じアナザーXXシリーズでもアクションには打ってつけの美形・嶋村かおり主演作では、仙元誠三のキャメラを得て、アクション・ヒロインの造形に凝りに凝り、異常に格好良かったものだが、坂上香織のアクションでは、全く洒落にもならない。

 ただ、隆大介のクールな好演には、要注目だ。彼こそこうしたジャンルの映画の住人に間違いない。

 蛇足ながら、今に始まったことではないが、オールアフレコの音響効果のまずさは、東映ならではの不手際で、本当に役者が可哀想になるほどだ。東映もいい加減に考え直したほうが良いのではないか?
(98/8/29 V スタンダード)

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