娘心も南進する!石井正紀著『石油技術者たちの太平洋戦争』

■太平洋戦争初期、日本は戦争継続の生命線である原油資源獲得のため南方作戦を展開し、スマトラ島、ジャワ島などの産油地帯を押さえていくけど、接収した採油施設や製油施設を稼働させるには、当然石油技術者が必要なので、民間の石油会社の技術者約7000人が南方に徴用された。けど、軍人でも軍属でもない、「白紙」で「徴用」された彼らは恩給もつかず、戦後に差別待遇を受けることに。南方油田地帯の制圧作戦では、パレンバン降下作戦が超有名で、本著でもパレンバンを中心として描かれる。

■当時の先進的な職業婦人として「南進女性」が描かれるのも興味深く、若い独身女子が進んで南方に職を求めたそう。現地工場などの事務職として、タイプライターの需要が大きかったのだ。そして、「ジャワの極楽、ビルマの地獄」と言われたように、あまり大きな戦闘がなく、かつての白人支配層が残していった風習と同様に、召使&昼寝付きの非常にリッチな高原生活を送ったという。まさに成瀬の『浮雲』の世界なのだなあ。

■原著はもっと大昔に出版されたのかと思っていたけど、1991年に発売されたもの。パレンバン降下作戦の露払いとして、石油技師を含む特攻隊が現地に潜入する『パレンバン奇襲作戦』という映画がずっと以前の1963年に公開されているので、あれは目の付け所が良かったね。ほとんど忘れられた映画だけど、石油技師の軍属が主役(丹波哲郎!)という着眼はユニークだった。

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