基本情報
浮雲 ★★★☆
1955 スタンダードサイズ 124分 @NHKBS
原作:林芙美子 脚本:水木洋子 撮影:玉井正夫 照明:石井長四郎 美術:中古智 音楽:斎藤一郎 特殊技術:東宝技術部 監督:成瀬巳喜男
感想
■日本映画のベストテンに入る名作、ということになっている。たぶん3回以上観ているけど、何度観ても、そんなに良いか?と疑問に思う映画。溝口健二の映画なんて、何度観ても凄いと思うけどね。『山椒大夫』なんて、原始人が観ても、感動すると思うけど、成瀬の映画はわかんないと思う。
■正直言って、成瀬巳喜男の映画なら他にもっと良いのがあるし、虚心に見て、非常に疑問の多い映画だ。後年の東宝オールスターの盆と正月映画なんかのほうが、技術的に凄かったりするし、『乱れる』とか『乱れ雲』とかのほうが優れていると思うなあ。
■お話の構成が、現在優勢なBS2構成的なものではなくて、シナリオセンター界隈で優勢な(?)「承」の部分を積み重ねて尺を調整するスタイルで、ドラマツルギー的に違和感があって、それは大昔観たときと変わらない。「承」の部分で、主人公を左右に揺さぶるエピソードを積み重ねてゆくというスタイルだけど、ある意味そのお手本だと思う。いってみれば、森雅之と高峰秀子が付いたり離れたりを繰り返すだけの話なのだ。
■原作は未読だけど、戦時中に「太鼓叩いて笛吹いて」に加担した林芙美子の反省が込められた話で、戦時中に戦争の影響が及ばなかった仏印で貴族のような生活を享受した不倫カップルが、終戦直後の日本で空や食わずの生活の中で、死ぬことも出来ず、腐れ縁を断ち切れず、引っ付いたり、離れたりを繰り返す。その中には、戦争の呪いがかかっていると思うけど、成瀬はそんな分かりやすい因果を捨象した。シナリオを確認していないけど、水木洋子の脚本で、そんな部分をカットした可能性があると思う。
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■構成的な問題は、とにかくフェードアウトの回数の多さが物語っていて、たぶん10回以上ある。しょっちゅうフェードアウトしている。ドラマがぶつ切りなのだ。高峰秀子と山形勲の過去の性的関係を描くのに、普通にセリフで十分描けるのに、あえて(?)短いフラッシュバックを使っているのも、なんだか異様だ。水木洋子と成瀬巳喜男なのになんでそんな下手な手を?と歪に感じる。
■最終盤で高峰秀子が謎の病(成瀬なので、具体名すら出さない)に斃れるのも異様で、あれではふつうご都合主義メロドラマと言われてしまうよね。常識的にはある程度前もって体質や体質について振っておくところだけど、敢えて、そうしない。これも水木洋子のシナリオにはありそうな気がするけどね。なので、ホントに悲劇に説得力がない。
■高峰秀子は一方的に森雅之を好いていて、執着して別れられない。でも森雅之は別に誰でも良くて、特に女という生き物に執着があるわけでもなく、でも女は向こうからいくらでも寄ってくるので、こちれから口説く必要もない。水を飲むように自然に女とまぐわってしまう雄。実際にそんな男は実在するけど、あまりに自然すぎて反省も改心もしない。生まれついてそんな生き物だからだ。そんな役柄、森雅之の独壇場だけどね。
■なので、最終的に高峰秀子は死んで、森雅之もかけがえのないものを失ってさすがに今回は堪えただろうという雰囲気で映画は終わるけど、きっと森雅之はお手伝いのおばさん千石規子にすら可愛がられて(手を出して)、のほほんと屋久島ぐらしを満喫するに決まっているのだ!映画も、なんとなくそんな雰囲気を幽かに漂わせながら終わるんですよね。成瀬もきっとそう思っているから!ホンマ、腹立つけど、そんな男は事実、実在するんですな。
■そして、この映画で食い足りないところ、男女関係と戦後(敗戦後)の日本の姿を重ね合わせた超観念的で耽美的なメロドラマは、吉田喜重が『秋津温泉』で実現してしまう。逆に、そのことで、本作に欠けていたところが見えてくる気がする。吉田喜重は、絶対に本作を意識していたはず。そして『秋津温泉』は間違いなく、大傑作。
補足
■原作では女が死んだあとに、女の金で別の女を作るという最終章があるらしい。そこまで描けば、確かに傑作になったろう。というか、そうじゃないと、完結しないよね。
■そもそも、女はなんであんなに男に執着するのか?という点が、説得力を持って描かれないと、おれたちみたいな原始人(@ブレイク・スナイダー)には共感の縁(よすが)がないのだ。そう思わない?
■ちなみに、成瀬じしんはあまり気に入っていないらしく、さもありなんと思う。
参考
maricozy.hatenablog.jp
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たとえば、翌年に『乳房よ永遠なれ』という傑作があって、こっちのほうが女の情欲が男にも腑に落ちるように伝わって、凄い映画と思うけど。
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