昔懐かしい、正調ストーカーサスペンス『愛がこわれるとき』

基本情報

Sleeping with the Enemy ★★★
1991 ヴィスタサイズ 98分 @DVD

感想

■90年前後にいっぱい作られたストーカーもののサスペンス映画で、なんとなく評判が悪かったので見逃していた。『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 ──SAVE THE CATの法則を使いたおす!』で取り上げられていたので、意外とおもしろそうじゃん!と今更拝見しました。

■投資コンサルの変態DV夫(パトリック・バーギン)から逃げ出すために、ヨットから転落して水死を装った美人妻(ジュリア・ロバーツ)だが。。。というお話。ナンシー・プライスの小説『逃げる女』が原作。

■という純正サスペンス映画で、いまどき珍しい正攻法の映画。韓国映画でたまに見かけるけどね。ビックリするのが、ジュリア・ロバーツが変態夫にあんなことやこんなことをされて、とてもお茶の間では見られない映画だということ。もちろん脱ぎませんけど、それにしても、ようやったな。

■特に秀逸なのが、第一幕で、CGじゃない夜間の嵐の海上ロケが素晴らしい臨場感。ステージ撮影では出ないよね。赤く照らすブイの存在感。このあたりはサスペンスの積み重ねがうまくいっていて、かなり見せますね。期待させます。

■ただ、中盤以降の展開はある意味定型的で、彼女にひたひたと迫る変態夫の動向は、なんといってもいろいろと見覚えがある。クライマックスの駆け引きも、もっと新工夫が欲しいところだ。ゆえに、完全に忘れられた作品になっている。

■作劇術としての見どころとか、限界とかが見えやすいところも興味深くて、タオルとか、青りんごとか、幻想協奏曲といった小道具の使い方も、参考になるなあ。ただ、こうしたジャンルの常だけど、お話を進めるためだけに登場する使い捨てキャラが目に付く。ヨットのオーナーの青年医師とか、遠距離バスのおばさんとか、変態夫に電話してくるYWCAのおばさんとか、その場その場で使い捨てなのだ。

■遠距離バスのおばさんなんて、完全に主人公からセリフを引き出すための説明用キャラで、業界用語で「リトマス法」というやつだけど、これくらいはOKということなんだろう。この場面は、主人公の述懐の芝居を見せるところだから。それに、友人の経験に偽装して自分の心情を語るという手法まで用意しているから、まあかなり工夫はされている。ここで青りんごを出しておいて、主人公の新たな恋のきっかけに再利用した(りんご泥棒!)あたりの作劇の工夫を褒めるべきなのだろう。

■終盤が勿体ないので、ジョセフ・ルーベン、もう少し頑張ればよかったのにね。老人ホームで二人がすれ違うところのサスペンスは、もっと丁寧に撮るべきだったなあ。

■ちなみに、脚本のロナルド・バスは、『ブラック・ウィドー』『レインマン』『ベスト・フレンズ・ウェディング』などの傑作を書いている名人じゃないですか!それにしては、意外と泥臭い書きぶりだと感じたな。演出のせいかな?


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