基本情報
エリン・ブロコビッチ
(ERIN BROCKOVICH)
感想(旧HPより転載)
バツ2で3人の子持のうえ無職の女(J・ロバーツ)が交通事故で知り合った弁護士(アルバート・フィニー)事務所に強引に居座って、たまたま大企業が六価クロム汚染を隠蔽している事実を突き止める。もちまえの勘の良さと明け透けな性格で600余名の原告をまとめあげ、硬直した弁護士達を叱咤して公害訴訟に持ち込む。
ハリウッドのトップ女優が公害訴訟を扱った社会派映画に主演し、しかも役柄も弁護士などのエリート役ではないというあたりが、意外性を狙った企画としてたしかにおもしろいのだが、考えてみると昔の日本映画でも当時の売れっ子女優達は今井正や山本薩夫などの社会派映画に出演したがっていた事実もあり、案外正統派の企画といえるのかもしれない。
ただ、いわゆる社会派映画として観るとあまりにも単純明快過ぎて「事実に基づく映画」というわりには物事が整理整頓されすぎて真実味はほとんどなく、作り話にしか見えない。これはスザンナ・グラントの脚本の甘さであろう。特に訴訟の鍵を握る重要な情報がいとも簡単に、都合良く向こうからやってくる展開は物語としてはあまりに杜撰ではないか?
実はスティーブン・ソダーバーグの映画は初めてで、インディーズ出身の割にはこれ以上無いというくらいに明快な話術と人物描写は見事。
しかも、エド・ラクマンのキャメラの流麗さ、特に構図と色彩設計の華麗さには驚かされる。ただ、こうした社会派映画のキャメラワークとして考えると、もう少し崩したスタイルのほうが効果的ではないだろうか。かなり巧妙で、一見自然なためつい騙されるが、照明効果など完全にハリウッドメジャーのスター映画の映像スタイルだ。
ただ、この映画の主眼は学歴も教養もないおばさんが学歴エリートたる法律の専門家達の硬直した現実認識を子育てという生活者の立場から糾弾し、さらにスペシャリストとしての彼らの知識と経験を使役して、公害被害者の救済という目的を達成するという部分の劇的な痛快さにあるのだが、実際それはただ映画という架空の空間の中だけではなく、我々の現実世界の制度の中でもそのまま当てはまる考え方であることを忘れてはいけないだろう。
この映画は単なるサクセスストーリーやフェミニズム称揚の映画ではなく、疲弊し本来の目的を忘れ去って形骸化した社会制度を再び活性化し、有効に機能させるためには何が重要かを訴えているところにその意義があるだろう。純粋に映画の表現としてみれば、全く大したことはないのだが、そうした社会派映画としての側面には、やはり貴重な部分を秘めている。
(2000/5/27 ビスタサイズ 京都松竹座)
