君の名は。 ★★★

新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド
君の名は。
2016 ヴィスタサイズ 107分
ユナイテッドシネマ大津(SC3)
原作■新海誠 脚本■新海誠
作画監督田中将賀安藤雅司、井上鋭、土屋堅一、廣田俊輔、黄瀬和哉 美術監督■丹治匠、馬島亮子、渡邉丞 
音楽■ RADWIMPS
編集、撮影、監督■新海誠

■『シン・ゴジラ』を凌ぐ今年の国民映画。ただでさえ強い東宝に追い風が吹き、いまや一人がちの状況だ。おまけに、こうした単純娯楽映画の製作に文化芸術振興費補助金まで申請するという厚顔ぶりにも頭が下がる。やっぱり世の中はずうずうしく生きないと損だね、というのは別の話。
■さて、映画のほうは意外にも古風な時空を超えた出遭いを描くファンタジーであり、ジュブナイルである。お話の趣向としては何度もいろんな映画やドラマで見たもので新鮮味はないが、とにかく新海誠が、その独自のシズル感溢れる画調で全編を描ききるその美術性にこの映画の肝はあるだろう。スタジオジブリでは敢えて漫画映画的なフラットな照明で押し通すため、すっかり日本のアニメ映画では光に対する感受性が麻痺していたわけだが、そこに新海誠という光の散乱にしか興味の無い作家が登場して、ジブリの後釜を狙うに到る流れは非常に興味深いところだ。
■これまでは内省的な作風がオトナの鑑賞を阻害してきた新海映画だが、本作はなぜか古風な、通俗的なメロドラマをずうずうしく援用して普遍性を獲得した。中年男子が観ても気恥ずかしくないし、大メロドラマを堪能することができる。ドラマの作劇としてはファンタジーにしても謎が多いし、必ずしも褒められたものではないが、とにかく新海節の炸裂する画力には陶然とする。こうしたイメージビデオ的な作風の実写の劇映画というものも、昔から確実にあり、それがアニメであるというのが新しい気がする。
■もうとにかく新海誠のキラキラした画調が2時間弱の間煌き続けるという至福体験。しかも、要所要所で気恥ずかしいけど、ごっこ遊びにはもってこいのフックな演出を繰り出すその商売っ気にも感心したよ。新海誠もオトナのずうずうしさを身に着けたわけだ。