サウンド・オブ・ミュージック ★★★☆

THE SOUND OF MUSIC
1964 スコープサイズ 174分
DVD

■久しぶりに3時間映画特集を再開することにした。年末年始のまったりムードには3時間映画がよく似合うはずだ。
■昔、テレビで見ているはずだが、きちんと見るのは今回が初めて。ミュージカルナンバーはほとんど有名曲ばかりというのが凄いが、それでもあまり聞き覚えのない曲もある。「さよならごきげんよう」なんて全く記憶に無かった。前半パートの最後の曲なんだが、後半のクライマックスで見事に再演される、超重要曲。このあたりの構成の妙味はさすがに万人を唸らせる。
■正直なところお話としてはかなり薄味で、3時間映画にしては物語の密度は薄い。前半を観る限り、家族向けの無難なミュージカルとしか思えなかったが、後半でオーストリア愛国心ナチスへの反抗心を見せるクライマックスで一気に熱くなる。そして、国外脱出のサスペンスと楽曲の魅力が見事に共鳴しあうという名人芸。ロバート・ワイズの至芸といえるだろう。『砲艦サンパプロ』のような渋くて地味でシリアスな名作を撮るかと思えば、万人向けの超メジャー作までそつなく撮りこなす芸域の広さは呆れるほどだ。
修道院のシスターがマリアを励ます「全ての山に登れ」も名曲で、すべての山を登り、すべての小川を渡って、その後に自分の夢を見つけなさいという含蓄の深い歌詞。夢をかなえるためにすべての山を登り全ての小川を辿れと言っているのではなく、順番が逆なのだ。自分の夢なんて簡単に思い定まるものではなく、さまざまな人生経験の末に、ああこれが自分の夢、自分の目指すところだったのだと、後になって気づくものだと教えるのだ。これこそ人生の先達の教えのありがたさというものだ。実は映画のテーマが凝縮された楽曲で、だからラストに高らかに鳴り響くと、感動を押し止めることができないのだ。


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