次郎長三国志 第九部 荒神山 ★★☆

次郎長三国志 第九部 荒神山
1954 スタンダードサイズ 101分
NHKBS2録画
原作■村上元三 脚色■マキノ雅弘
撮影■山田一夫 照明■西川鶴三 
美術■北辰雄 音楽■鈴木静一
監督■マキノ雅弘

■当初予定された第十部が製作されなかったので、シリーズ最終作となった本作、キネ旬資料では脚本を橋本忍が担当したらしい(Pが黒沢組の本木荘二郎だからね)が、多分御大の気に召さず、脚色として自分で書き直したのだろう。
■次郎長は完全に背景に後退し、次郎長一家と黒駒勝蔵の対立が激化するまでを、やくざ同士の抗争で迷惑を蒙る農民たちの視点を盛り込んで描くが、当然尻切れトンボで終わる。次回作への興味を盛り上げて終わるという構成にすらなっておらず、意欲の減退をうかがわせる。
■それでも、抗争の際に追っ手の目を眩ます為に農家に放火した嫌疑をかけられた次郎長一家が農民たちの前に姿を現す場面など、次郎長一家が山の神(の化身)にでもなったかのような幻想的な描き方がされており、やくざという存在が人間と神の中間に位置するマージナルマンであったことを示唆する視点が斬新だ。この時代にやくざ映画にそうした視点を意識的に導入するというのは、画期的なことではないか。

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