STOLEN SUMMER
2002 ヴィスタサイズ 94分
BS2録画
■アイルランド系カトリックの家のいたずら小僧は、ユダヤ教徒を改宗させれば地獄におちるのを避けることができると思い込み、寛大なユダヤ協会のラビと知り合い、その息子を改宗させようと企むが・・・
■ベン・アフレックとマット・デイモンが新人発掘のために発案したオンライン脚本コンテスト“プロジェクト・グリーンライト”から生まれた低予算映画だが、さすがによくできた脚本で、宗教とはなにかという深遠なテーマに軽妙に斬りこむ佳作である。そのシンプルな語り口と、作劇技巧は映画の教科書になるだろう。脚本、監督はピート・ジョーンズという男だ。
■8歳の少年の夏休みの”探求”を通して、キリスト教とユダヤ教の違いや、人種による差別感情、人間が信仰を必要とする理由といった難しい問題を平易に啓蒙的に解き明かしながら、自然に学び取ってゆくという、なんだか考えてみればNHK教育みたいな映画なのだが、ハリウッド映画伝統の定石をうまく活用することで、教育映画にありがちな説教臭さは皆無だ。
■なにしろ94分しかないので、親友の死を軽く扱いすぎている気もするが、ちょっと日本では考えられないデリケートな主題を巧く料理しているのは、立派。地味ながらラビ役のケヴィン・ポラックがいい味を出しているし、アイリッシュ系の心意気をじっくりと演じるエイダン・クインも、こちらも地味な配役ながら説得力がある。