ほとんど石井隆ワールドだった、ヤングケアラーの残酷な恋!初期の江崎実生の凄みを再認識した『愛しながらの別れ』

基本情報

愛しながらの別れ ★★★☆
1965 スコープサイズ(モノクロ) 80分 @アマプラ
企画:坂上静翁 原作:藤原審爾 脚本:国弘威雄 撮影:永塚一栄 照明:三尾三郎 美術:坂口武玄 音楽:伊部晴美 監督:江崎実生

感想

■上京して真面目に生きようとする青年(浜田光夫)とヤングケアラーの少女(和泉雅子)が出会い、ヤクザな兄貴(山内賢)が反対する中、彼女の複雑な家庭環境を離れて生きようとするが。。。

■江崎実生が良い監督なのは知っていて、いくつも傑作(『帰らざる波止場』良かったよなあ)があるけど、後年は早撮り職人というイメージになってしまった。でも、初期は凄かったということがよくわかる秀作。イメージ的には、舛田利雄と中平康の良いところを合わせた感じだ。日活伝統の社会派青春ドラマにヤクザをぶち込んだ、残酷な青春映画で、後年の石井隆ワールドに近似している。ほとんど村木と名美にしか見えない。

■中平康の長廻し演出が顕著に踏襲されていて、随所に登場する。セットでのフィックスもあれば、ロケでの手持ちもある。アクション場面の大胆なスペクタクルも押しの強さも舛田利雄ゆずりで、メリハリの効き方も踏襲している。日活映画のいいところを全部盛り込みましたという演出で、非常に冴えている。アパート付近の路地の空間をかなり大規模に構築したあたりも見事だし、リアルな町並みの、空間や生々しさを積極的に取り込んだロケ撮影の見事さも陶然とする。クライマックスの渋谷あたりの大規模ロケも凄いので、びっくりするよ。大丈夫か?

■お話は同じく国弘威雄が書いた傑作『夜霧のブルース』を思い出すけど、偶然でしょうか。それに、一番驚くのが、役者の演技が明らかに高レベルなことで、どう考えても浜田光夫はベストアクトの代表作のひとつだろう。和泉雅子も作品によって波があるけど、これは明らかに上出来。大変な美少女だし。クライマックスの家族会議が修羅場に変じる場面の押しの強さも良いぞ。母親役の東恵美子はちょっと弱いけど。
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■随所に水の反射光をあしらった照明効果が印象的で、ちゃんと心理描写になっているから凄い。皿を洗う流しの水の反射とかまで山内賢にかかっているから、凝り過ぎにも思うけど、まあ、妹との会話で彼の心の揺れを映像で表現してるわけ。アパート付近の路地のセットでも、用水路の反射光をあしらっていて、かなり手がかかっている。

■キネ旬DBによると、ラストは初期シナリオではもっと残酷で、親友のチンピラを刺し殺すことになっていたらしい。最終的に、もう少し緩やかに、強盗未遂事件になっているけど、それでも、肝心の彼女の入院費用は払えたのかなあ。兄貴(山内賢)がなんとかしたに違いないよね。でもチンピラだからなあ。ここは、ちょっとヌルくて惜しいかも知れない。


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