龍虎門
2007 ヴィスタサイズ 94分
TOHOシネマズ二条(SC4)
総合武術の虎の穴、龍虎門を継ぐべき兄弟、ドラゴン(ニコラス・ツェー)とタイガー(ドニー・イェン)。だが、幼くして母親と龍虎門を去ったドラゴンはやくざの用心棒に成り下がっていた。謎の邪拳集団羅刹門が台頭し、ドラゴンが義理を感じるやくざの親分を殺し、龍虎門の主宰者を撃破する。復讐を誓うドラゴンとタイガーはそれぞれ瀕死の重傷を負ってしまう・・・
香港で人気のコミックの映画化だそうで、ハリウッドのアメコミの映画化を真似た企画だ。香港映画らしく、物語は各所で説明不足と不整合を来たし、ギクシャクしてるが、ワイヤーワークとデジタルエフェクト満載の超絶アクションで一気にまくし立てる。冒頭のニコラス・ツェーが華麗な足技を披露する場面からして圧倒的な美しさで、陶然とさせる。
かちこみ!というタイトルは日本の配給会社が勝手に編み出した奇手で、まったく適当なタイトルだ。物語の基調となるのは、極めて正調なヒーロー活劇である。しかもそのヒーローとはニコラス・ツェーではなく、ドニー・イェンなのだから驚く。この映画は、悪の道に迷い込んだ兄が如何にして悪行の精算をし、ヒーローとして正義の道に復帰するかという物語を正攻法で語っているのだ。そこにこの映画の古風な感動の源泉がある。
アクション画面はいかにも香港映画ならではの超絶技巧だが、この映画で監督ウィルソン・イップが力を入れているのが、ドニー・イェンの魂の再生を巡って繰り広げられる数々のエピソードの映像設計であり、悪女との因縁情話である。”ヤンクアクション”といういかにも若者受けを狙った惹句とは裏腹に、極めて70年代的なヒーローアクションなのだ。クライマックスではなぜか車周作の”地獄車”まで登場するのだ。
音楽はなぜか川井憲次がイケイケの武闘派スコアを聴かせてくれるのも熱くていいのだが、それにつけても謎なのがドニー・イェンの存在感で、いったい主役の顔なのかという点は大いに疑問だ。確かに、大御所感満点で熱く主役を演じ切っているのだが、正直アップはキツイですよ兄貴。