アメリカン・スプレンダー ★★★

AMERICAN SPLENDOR
2003 ヴィスタサイズ 101分
DVD


 病院で書類整理係として働くハービー・ピーカーポール・ジアマッティ)は、ある日、自分の日常をコミックにしようと思い立ち、知り合いの漫画家ロバート・クラムに作画を頼み、“アメリカン・スプレンダー”という漫画を発刊するや、注目を浴びる存在に。やがてハービーはこの作品の熱心な読者ジョイスホープ・デイヴィス)と出会い、結婚するが・・・

 実在の漫画原作者であるハービー・ピーカーの半生を、彼自身のナレーションで映画化した異色作。日本では「アメリカン・スプレンダー」というコミック自体が未知の代物なので、変格恋愛映画としてミニシアター系で売られていたようだが、むしろウッディ・アレンの映画を髣髴させるシニカルな視点が興味深い。

 主演のポール・ジアマッティがコミックの絵柄に込められた鬱屈した目つき(というか目元の造形?)をよく再現しており、その演技的を眺めているだけで、主人公の成功したような、そうでもないような微妙な人生を実感することができる。その意味ではしっかりとした大人向けの映画である。

 しかし、劇中に登場するトークショーに登場する本物のハービー・ピーカー(のビデオ映像)の言動のはっちゃけぶりや、そもそも自分自身やその周囲の人間達の冴えない日常をそのまま漫画に仕立て上げたという「アメリカン・スプレンダー」などというものの存在自体のインパクトのほうが強烈に印象に残る映画である。

© 1998-2024 まり☆こうじ